桜咲く頃

毎年桜咲くこの頃に思い出すこと

都会の公園に

満開の桜が咲いていて

昼間は

多くの住人で賑わっていました。

 

が、深夜になる頃には

公園はひっそりしています。

 

飲み会帰りの私は

静かな公園を抜けて帰ろうとしました。

 

が、ちょうど公園の入り口に

さしかかった時

満開の桜の下に

一人の男性が佇んでいるのが見えました。

 

60代くらいであろう

ホームレスの男性でした。

 

男性はただじっと

満開の桜を見つめていました。

 

桜も

男性に応えているように見えました。

 

そこには

他のものは介在してはいけない。

男性と桜の対話を

邪魔してはいけない。

 

そんなことを感じ取った私は

男性に気付かれないように

そっとその場を離れたのでした。

 

あんなに優しく神々しいお花見を見たのは

あれが最初で最後です。

 

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